小八木町の改築(一期工事)
パーゴラのある家
群馬県高崎市に建つ、親子3人が暮らす住宅である。敷地は大きな幹線道路から少し小道に入った道路沿いある。敷地を境にその裏は長閑な畑や田園風景が広がり、農家が点々と建ち並ぶ。素っ気ない近所付き合いとは違い、農家の野菜を近所に配ったりと昔ながらのコミュニティが残っているそんな場所である。敷地は調整化調整区域に位置するため、一見新築であるが、申請上は一定条件を満たした改築となっている。
建物はローコストでありながら可能な限り高性能な住宅を目指した。そのため、基本的には合理的、汎用的、単純化というキーワードを先行させる。改築の条件で床面積に制限があったが、敷地いっぱいに広がるようなおおらかな建築を目指した。建物の構成は単純な3分割構成である。外にいくに従い外部に開かれつつ気積が大きくなり、内にいくと気積が小さい個室になる。入念にプランニングをするというよりも、大きな構成だけを決め、機能が限定される部屋を最小限に留めた一室空間とした。今後、生活に変化があった場合もフレキシブルに変容できることを意図している。日射シミュレーションをした結果、南側の隣地のボリュームの影響で、1Fは冬の南の日射はあまり期待できないことがわかった。そのため南面はできるだけ間口の広い開口部とし、必要な構造は中央にまとめて端部から斜めに日射を確保できるようした。また床の一部をスノコ状とすることで床面積を確保しながら2Fから明るい光が得られるように配慮した。
最も開かれた外側のパーゴラ空間は特定の機能をもたない雨ざらしの空間である。建蔽率的にも余裕があるため、今後の増築を踏まえて残している余白でもある。屋根もないので床面積にも入らない。構造のフレームがあり、ルーバーがあるだけである。ただのルーバーではあるが夏至の角度に合わせてピッチを調整し、室内への日射制御を担う建築の重要なエレメントである。当初は可動式で微妙な角度の調整が可能なルーバーを考えていたがコストと工期の影響で断念し、二期工事の構想に持ち越した。代わりに即物的で常時湿潤状態でも使用可能な構造用合板をルーバーとして設置し、外用のカーテンを設置して気が向いたらプライベートな庭になるようにしている。
住宅の構成は単純で平面を3分割し、手前からa、b、cとなる。aは最もおおきな空間となり、屋根もなく外部に開かれている。大きなルーバーは公園にあるパーゴラのように雨風は遮らないが、室内への日射制御を行う。bの空間は内部空間になり、aの空間に開かれたパブリックかつ機能があいまいなフレキシブルな空間となる。使い方を規定せず、多様な生活の変化にも対応することを意図している。cの空間は機能と部屋が一対になり、必要な機能に即した大きさとなる。
©usagitocamera
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建物性能のコンセプトは最小限の汎用的設備で高性能な住宅を実現することである。気象データを参考に手軽に扱えるシミュレーションを駆使しながら検討を行った。空調は一般的な家庭用エアコンを床下と2階の上部に設置した。床下は暖房で、2Fは冷房をメインとし、補助的に2台目を稼働させて調整をおこなう。外皮性能はUA値0.5W/㎡K程度とし、断熱材はコストメリットの高い高性能グラスウールの充填断熱に加え、外側に発泡プラスチック系断熱材による外貼り断熱のハイブリッド構造とした。グラスウールは内側の防湿シートの施工が生命線となるため、防湿シートの欠損を出来る限り避ける為にコンセント類は間仕切り壁か床に配置している。2Fの床で一部スノコ状とすることで、光と空気の移動が可能なようになっており、その真上にシーリングファンを設置して空気を拡散させる。日射制御は外部のルーバーで行い、南北に開口を設けて通風に配慮しつつ、屋根の上に窓を設け上空乱流を利用した自然通風も期待している。寝室のある2Fの南面は夜間の断熱補強として全面に断熱ブラインドを設置した。換気は第3種換気とし、給気口は壁から床下につなぎ、外気が直接室内に導入されないように配慮している。

構造は尺貫法モジュールを基本に敷地形状に合わせてやや変形した在来軸組構法とした。構造が露出するため、金物が露出しないようロングビスを多用した。南面の開口から日射を多く取り入れるために両側に剛性が高い105x210の偏平通柱を配置して、開口部分は通柱に生じる曲げ応力で水平力を多く負担している。開口高さをできるだけ低くすることで横広の開口を確保した。1Fは最小限の耐力壁+方杖を配置して偏心率のバランスを調整している。内部のあらわしになる床と屋根梁は2Fのみ中間に支点を設け、連続梁にすることでアラワシになる梁せいは150mmに統一している。補助的に入っている方杖は、形をなぞるようにr状に仕上げを施した。